ワクチネーション子犬の社会化でよく質問されるのが、ワクチネーションとのからみです。
ワクチネーションというのは、子犬は母犬からの抗体があるので、成犬のように年に1回というワクチン接種ではなく、数回に分けて打ちます。
この時には、病気に対して抵抗力がないために、獣医さんは、外に出したり、他の犬との接触を避けるように飼い主さんに注意します。
しかし
この時期が子犬にとって『環境に順応するための窓』の開く限られた時で、『社会化』とよばれる時期なのです。
犬をどんな環境でも落ち着いていて、安心し、安定した心理状況にするには、社会化はとても重要なプログラムと言えます。
獣医師に「子犬が病気になるかも知れない」と言われてしまうと、飼い主は環境に馴らすというプログラムを、なかなか受け入れてくれません。
もちろん、病気にかからないようにすることも大切ですが、子犬がこれから生活して行く上で、精神安定をはかっていかねばならない社会化を無視する訳にはいきません。
獣医師の間でも「矛盾を感じている」と言われますが、犬の性格によっては社会化の時期に環境に馴れさせられていなかったために『一生、環境で問題を抱えてしまう』ことになった犬もたくさん存在します。
「多少のリスクを抱えることになっても、社会化はして行く必要がある。」
とおっしゃる先生もいます。
反対に、絶対にダメだとおっしゃる先生もおられます。
私はパットが子犬の時も、ビートの時も、ハナの時も、ワクチネーションの最中に社会化のためにどこへでも連れて歩きました。
3頭共元気に育っておりますし、病気で大変な目に遭ったこともありません。
それよりも、
「社会化期に環境に対しての馴れるプログラムを怠る方が、よっぽど犬達のためにならない。」
と思って行いました。
もちろん、外に出すには細心の注意を払いました。
しかし、パットもビートも大型犬ですから抱えて歩いた訳ではありません。
ハナも同じようにしました。
今は、とても獣医医療が進み、ほとんどの犬たちが予防注射をしていますから、病気になることは少なくなっていると思います。
もちろん、ゼロではありません。
ジステンパーに感染した子犬もいましたし、パルボで死んだ子犬も知っています。
ですから、強要するつもりはありませんが、社会化の時期に効果的にプログラムを展開できなくて、後々に問題を抱えてしまって、とても苦労している飼い主さんはたくさんいるのです。
犬も不幸です。
環境の変化に、とても精神的に辛い思いを抱えているのですから。
パピークラス子犬の社会化が重要ということで、進んでパピークラスに参加されたり、ドッグランにでかけている飼い主さんの中で、きちんとしたプログラムを持っていないところで子犬に大きなトラウマを負わせるような悪い経験ばかりをさせてしまった飼い主さんもいます。
社会化のプログラムは、ただ単に犬同士で遊ばせるだけではできません。
犬の性格や環境作りの設定がきちんとしていなければ、悪い経験をさせて、悪いことを学んでしまうのです。
子犬の時期に『適切な社会化』と『咬みつき抑制プログラム』を受けてこなかったばかりに、とても苦労している飼い主さんたちもたくさん見てきました。
ある人は、犬のせいにして犬だけに責任を負わせてしまっていましたし、ある人は
自分がきちんとした目を持っていなかったために良くないプログラムのところに犬を連れて行って、犬に悪い経験ばかりさせたために、問題を抱えることになったケースもあります。
2ヶ月未満の子犬母犬から早くに離すと精神的に不安定になるというのは、もう犬の世界では科学的にも言われていることなのに、日本においては諸外国のように2ヶ月未満の子犬を輸送してはいけないとい保護法すら通らない実態をもう少し受け止めて、社会化に対しての意識を付け直してもらえればと思います。
最後にワクチンの大切さ、そして社会化の大切さ、どちらも欠かせてはいけないことだと言わざるを得ません。
どちらをどれだけ優先させるかは、子犬の健康状態や性格が大いに重要になると思います。
しかし、全く環境に馴れさせないことのないように、心がけてやらねばなりません。
子犬の『脳の発達』のためにも環境刺激は、重要であるのですから。