(Update:2008-8-22 12:21:39)
合図の意味
犬のことをよく知らないのか、誤解している人をよく見かけます。犬に私たちの言葉がわかると思っている人です。
しつけ教室をしている時でも、「おすわり」を言わないで犬を座らせてみてと言うと飼い主さんたちは、みんな不思議そうな顔をします。
「おすわり」と言っても座らない犬に、また「おすわり」とくり返すのです。
これは、みんな犬が「おすわり」の意味を知っていると思っているからなのです。
でも、犬は犬ですから犬語しかわかりません。
ちょうど私たちが日本語以外の言葉で話しかけられているのと同じ状態なのです。
頭のまわる人なら状況から「こう言ってるんじゃないかな?」と考えることもできるのですが、にぶい?人ならサッパリわからないと思います。
犬たちも同じなのです。
頭のまわる子ならば予測を立てて行動できるのですが、経験不足だったり、性格的な問題があったりすると予測を立てることができなくて、私たちの言葉に反応できないのです。
そもそも、犬は関連づけという結びつき学習が得意な生き物です。
行動とごほうびの結びつきの他に、行動と合図の結びつきを学習するのです。
もともと、その行動と結びついている合図と別の合図でもその行動と結びつけることができます。
これを条件反射という難しい言い方をしたり、古典的条件づけなどと言ったりします。
よーするに、もともと行動を起こさせるきっかけとなっている刺激を別の刺激でも行動させるように、きっかけを代えて結びつける学習のことを言うのです。
だから私たちは、犬の座る動作を「おすわり」という言葉でも、ハンドシグナルでもさせることができます。
オートマティックシットは、人が足を揃えて止まるという動作が犬の座る合図になっているのです。
犬が、行動と結びつけるためには、合図になる刺激は必ず行動の前に出なければなりません。
よく合図を教えている人で、犬が座ってしまってから「おすわり」と言っている人がいます。
これでは、犬は座ることと「おすわり」の言葉を結びつけて学習することができません。
もうひとつの問題は、行動と合図を結びつける学習をさせなければならないということを忘れてしまう人がいます。
犬がしっかりとすべき行動を理解しないうちに合図をつけようとする人です。
何をするべきかわかっていないのに、合図を教えられるはずがありません。
行動を理解してからつけなければ意味がないのです。
トレーニングの試験においては、合図に規制が科せられることがあります。
JKCでは、声符(言葉)と視符(ハンドシグナル)は同時に使うことができません。
しかし、優良家庭犬認定試験GCTでは、同時なら1つの合図となります。
どちらでも大切なのは合図を犬がどう意識するかです。
複雑な刺激の組み合わせと思わせてしまうと、なかなか合図に反応しにくくなります。
犬が合図として行動と結びつける刺激はトレーニング中の環境の中から犬が自分で選ぶのです。
ですから、犬に座らせる前にたくさんの刺激があればどれを犬が選ぶのか把握できなくなったり、複数のものを結びつけてしまうとそれらがひとつでも欠けると反応が起きにくくなります。
合図を教える時には、犬にすべき行動がわかっているのかをこちらが知っておくことです。
そして合図にしてもらおうと思っている刺激は、ひとつにできるように環境を管理する必要があります。
行動の前に確実に出して犬に結び付けできる状況を作らねばなりません。
合図は、できればひとつずつで反応できるようにして複数をひとつのものとならならいように個々で反応できるように教えておくことです。
どうです?合図を教えるってけっこうややこしくって難しいものなのです。
不用意に、いい加減に教えるから犬が反応できないのに、犬がやらないなんて言わないで下さいね。
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