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(Update:2008-1-28 10:35:54)

第2話) めぐみさんとバロン

めぐみさんは、無類のスヌーピーファンです。
彼女は、犬を飼うならスヌーピーのモデルとなっているビーグルを飼いたいと思っていました。


やっと環境が整い、かわいいビーグルの子犬をめぐみさんは手に入れました。
「かわいい!あんたの名前は、バロンだよ。男爵って意味なんだ。今は、ちまちましているけど、きっと大きくなったら風格のある男爵って名前に負けないワンコになるよ!よろしくね、バロン。」


バロンは、散歩に行っていても通りすがりに人に「まぁなんてかわいい子犬なの!」と声をかけられて、いつもめぐみさんを喜ばせていました。


でも、めぐみさんには、少し気になることがありました。
子犬の頃には、子犬らしくて気にならなかったのですが、何にでも気を向けてしまい、自分勝手にどんどん行動してしまうバロン。

小さい体なのに大きな声で鳴くことも悩みのタネでした。

また、意地汚くて、拾い食いや、盗み食いをすることにも困っていました。

めぐみさんは、しつけ教室に行く決心をして、バロンと一緒に勉強することにしました。

トレーニングをしている時に、先生から優良家庭犬の試験があると教えられました。


何をやってもダメダメ犬のバロンだけど、このテストを目標にしようとめぐみさんは、決めました。

それから、バロンとの戦いが始まりました。
盗み食いをしたり、拾い食いをした時に、口を開けて取り出そうとして、バロンに本気で咬みつかれて血を流したこともありました。

でも、あきらめないで根気よく、めぐみさんは、バロンをトレーニングして行きました。

そして、とうとうテストを受けてみようと挑戦しました。
結果は、あえなく惨敗でした。

めぐみさんは、気を取り直して、またトレーニングして、テストにチャレンジしましたが、また惨敗です。

もう、いったいどれくらい受けたのでしょう?
数えられないくらい受けていました。

口の悪い友人が、「バロンで受けても絶対に受からないよ!ビーグルだもん。」とめぐみさんに言いました。
「そんなにしてまで受かりたいの?受かりたかったら別の犬で受けたら?」
何気なく言っているのだろうけれども、めぐみさんは、そんな言葉に傷付きました。

でも、あきらめませんでした。

ある日、しつけ教室の先生が「めぐみさんは、偉いね。それだけ自分の犬を信じることができるなら大丈夫だよ。あなたが諦めなければ、きっと合格できるよ。バロンを、自分を信じることだよ。」と応援してくれました。

気がつけば、バロンとテストに挑戦を始めて10年の月日が流れていました。
子犬のようだと思っていたバロンも白いものが目立つようになって、すっかりオジサンになってしまいました。


それでも、誰がなんと言っても、めぐみさんは、バロンとテストに挑戦し続けました。

「どうしてそんなに意地になってるの?あなたに付き合わされるバロンがかわいそうだわ!」と言われることもありました。

でも、めぐみさんは、「私はバロンを信じてる。確かにバロンは、決してお利口な優秀な犬ではないと思う。でも、家庭犬として落第だとは思わない。私と一緒にがんばってくれていることは無駄ではないし、私は自分もバロンも信じてる。間違ってなんかいない!」と自分に何度も言い聞かせて、チャレンジすることをあきらめませんでした。


そして、11年目にとうとう合格しました。
めぐみさんは、バロンを抱きしめて、「ありがとう、バロン。やっぱりあなたを信じてよかった!時間がかかったけど、できないことなんか私たちには何もないんだよね。自分を信じて、バロンを信じてよかった!」と心から思いました。


気が付けば、めぐみさんは動物病院の看護士としてバリバリと仕事をしていました。
「バロンだけでなく、たくさんの動物たちを救いたい。」
そんな聖職を見つけることができたのもバロンのおかげなんだと、もう、年老いてすっかり丸くなったバロンを優しい顔でめぐみさんは見つめています。


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