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(Update:2008-7-21 21:41:26)

第5話) ちあきさんとドリーム

ちあきさんにとっては、この老人ホームへの道を車の後部座席にのんびりと横たわっているドリームと何度通ったことでしょう。
AAA動物介在活動というものを知ったのは、もう15年くらい前のことでした。

当時、ドリームのお兄さん犬のパワー君と近くの商店街を闊歩していた頃に、しつけ教室の先生から「パワー君は、とても人が好きだから、お年よりに元気になってもらうために触ってもらったり、楽しい時間を一緒に過ごしたりするボランティアを獣医さんの会が始めたんだけど参加してみない?」と声をかけられたのがきっかけでした。

それまでちあきさん自身がボランティア活動をすることはありましたが、愛犬パワーと一緒にするなんて考えもしていませんでした。
「私とパワーでそんなことができるのかしら?」と弱気でしたが、参加し始めたら楽しくてしかたありませんでした。

気が付けば、パワーと一緒にするボランティアは、10年に渡って続きました。
パワーが少しずつ年老いて活動が難しくなった頃に、しつけ教室の先生から保健所で里親出しをしているワンコがいるから飼わない?と勧められてドリームと出会いました。

パワーと違って、怖がりで意気地なしのドリームを活動に使うことは、ドリームにとって辛いことではないのかと思ってこともありましたが、怖い気持ちを克服するためのトレーニングを行っているうちに、どんどん受け入れが進み、活動もパワーと同じくらい楽しんでくれるようになりました。
気が付けば、ドリームも6歳になっていました。思い切って認定試験を受けようと決心し、ドリームを見ると、「お母さん、どうしたの?僕と何かしたいの?」とドリームがキラキラの瞳でちあきさんを見上げています。
「パワーとは、違った魅力、違った苦労をしてきたドリームだけれども、活動をする時のこの瞳のキラキラは同じなんだわ!」ちあきさんは、パワーを引退させて、ドリームと活動をすることを今まで自分たちを支えてくれた仲間に打ち明けました。
みんながささやかな引退セレモニーをパワーのためにしてくれました。
それからまた時間がゆるやかに流れ、パワーは老いてはいるものの元気で隠居生活を楽しんでくれているし、ドリームも活動を楽しんでくれています。
ちあきさんも、いつの間にか、すっかり活動の中心になり、後輩飼い主の指導に当たるようになりました。


こんな風にできるようになったのも、パワーとドリームのお陰だと愛する2頭の犬を抱きしめて、「これからの楽しくやろうね!」と彼らの顔を覗き込みます。
犬たちは、なんだかよくわかっていないようですが、相変わらずキラキラした瞳でちあきさんを見上げています。


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